ステファン・コステロ
米ジョージ・ワシントン大学
韓国問題研究所 客員教授
ステファン・コステロ教授(66)は政治分析家である。現在、公共政策研究で有名なジョージ・ワシントン大学、韓国問題研究所で客員教授を務める一方、議政府(ウィジョンブ)市にある京義研究院の客員研究員であり韓国日報英字版で韓半島問題に関するコラムを13年間書き続けている。
去る8月21日、釜山、海雲台(ヘウンデ)で韓日トンネル研究会が主催した「ステファン・コステルロ教授招請韓日海底トンネル懇談会」で彼に会った。去る4月キム・ジョンイン「国民の力」非常対策委員長による「韓日海底トンネルの推進を積極的に検討する」という発言がなされた後、「韓日海底トンネル推進」は釜山市長補欠選挙に大きな波紋を呼び起こし、再度、釜山の世論が大きな関心を持つ契機となった。韓日海底トンネル・プロジェクトの展望について彼がどのように見ているかを聞いてみた。
1990年代中頃、キム・デジュン元大統領が創立したアジア太平洋財団(アジア・太平洋民主指導者会議、FDL-AP)との縁から韓国民主党の人々と頻繁に接触をしてきた。
キム・デジュン大統領の政策参謀機構であったアジア太平洋財団の進歩的民主主義指向は当時、ワシントンの政界に大きな関心を呼び起こし、私は大きな関心とたゆまぬ情熱を持って30年間余り韓国に通った。
回数にすれば50回は越えるだろう。現在はジョージ・ワシントン大学、韓国問題研究所の客員教授を務めながら、韓半島情勢と南北協力に関するテーマで京義研究院と継続的な研究を共にしている。この研究を進めるために定期的に韓国を訪問している。
2000年6月15日、南北頂上会談がなされた後、そのうち南と北を結び、韓半島を中国とロシアへとつなぐ大きなインフラ事業が推進されるだろうということで、より一層、積極的な関心を持つようになった。
そして報道機関と知人たちを通して韓日トンネル・プロジェクトを知って、平和実現のための主要な国際社会基盤施設の一つになるものだという考えを持つようになった。
たとえ、現在の韓日間の冷え切った関係の中で日韓両政府が韓日トンネル・プロジェクトに支持を表わさないとしても、経済的・戦略的な根拠は圧倒的なものがある。さらに、ヨーロッパとアジアでトンネルや橋梁建設事業が多くの発展をもたらし、技術的課題が多く解消された。
米国の基盤施設拡充資金による支援に適合したプロジェクト
韓日トンネル・プロジェクトは韓日両国に非常に価値あるいくつかの目的を持つ。これは両国が歴史に対する論争から抜け出して政治的焦点へと転向できる大きなプロジェクトだという点だ。
そしてこのプロジェクトが表わす莫大な恩恵を想像しながら両国指導者が自国にどれほど利益になるだろうかと悩むことになるだろう。
また、韓日トンネル・プロジェクトによって、韓国の技術工学と技術専門性を立証して、どれほど有用であるか、その現代的能力と新技術開発までも表わすことになるだろう。
おそらく東北アジア地域の緊張緩和であろう。これは結局、国防費支出と脅威の評価に影響を及ぼすものであるため、事実上、大きな利点であるに違いない。
緊張緩和問題として、このプロジェクトは新しい地域軍備統制協定に役立つであろう。また、東海岸と西海岸につながる多目的回廊として韓日トンネルを加えることは、ロシア、中国、韓国、北朝鮮そして日本を行き来する貨物と人々の移動をより容易にするものであるため、その価値はさらに増すであろう。
米国の関心事は韓日が経済的に戦略的に協力していくことだ。したがって韓日海底トンネル・プロジェクトを積極的に支持するだろう。バイデン政府がスタートして「アジアにより良い基盤施設拡充資金(Build Back Better Infrastructure Fund for Asia)」を支援しようという動きが始まった。
それゆえ韓日トンネル・プロジェクトは米国が資源と資金を支援するにふさわしいものだと解釈することができる。米国の数名の官僚は、韓国政府が中国に非常に依存しており、韓半島で利害関係が衝突することを憂慮している。
韓日トンネル・プロジェクトは東北アジアの韓国と日本という二大民主陣営がどのように相互関係を強化して、経済協力で北朝鮮をさらに近くに導けるかということを見せることで、そうした憂慮を払拭するであろう。
合わせて、ワシントンの政界の人々は越年した「東北アジア平和」議論に嫌気がさしているようだ。より戦略的接近と論理的根拠を主張する実質的方案が出されるならば耳を傾けるだろう。
バイデン政府がスタートして民主党政治家はより積極的で進歩的な韓米関係をつくっていこうとする。そのことが米国にとって得になると判断され一層積極的に支持するであろう。このような見解から韓日トンネル・プロジェクトは非常に具体的かつ論理的な東北アジア平和戦略の取り組みだということができる。
妥当性研究を継続して行なっていくべきであり、韓日両政府に向けて大衆の意見が沸き上がってこないければならない。政府がこの事業を行なうことが論理的であるのだから行なうようにと圧力をかけることが必要である。
また、韓日トンネル・プロジェクトは政治的な方法を利用して、一層大きな戦略的利点を見せることで、それを望む人々をいくらでも引き入れることができる。
南北関係は早く改善されなければならない。浪費する時間はない。韓国政府は非核化を含めた北朝鮮問題に対する主導権を握って独自の計画を立てなければならない。
過去、キム・デジュン大統領は「先に平和、後に統一」論を主張した。東北アジアの平和については、南と北が平行線をたどっており関係形成が難しいため、北朝鮮をはじめとした中国・ロシアの東欧圏の共助と韓国をはじめとした米国と日本などの西欧圏が共に同意する平和構図が設定されなければならない。
この戦略はそれぞれ非核化、経済開発、戦略的緊張緩和に役に立つであろう。
対北朝鮮制裁緩和を通じて米国と韓国は、中国とロシアが (ハノイ北朝鮮米国会談以後)北朝鮮の新しい交渉遵守を引き出すことができると期待している。
過去20年余り、北朝鮮は国際社会参加に深い関心を寄せてきた。対北朝鮮制裁緩和と経済協力は非核化と北朝鮮の韓半島・日本繁栄地帯統合のために最も良い手段だ。
緊張緩和は南北相互恩恵を引き出すための必須課題の中の一つだ。新しい協定は緊張を低くするのみならず軍事費支出を再考するものだ。
その支出の相当部分は韓国と北朝鮮、双方の経済発展と国民生活の質の向上に使用され得る。米国が韓半島への対処法を変えるのにあたっては韓国が中心的な役割を果たさなければならない。
したがって韓国の対米戦略は非核化、開発、軍事協力等で行なうべきであろう。
もちろんだ。コロナ事態によって、どんな国も孤立状態を維持できないということが明らかになっている。
北朝鮮も早くワクチンを普及させなければ軍事力増強と軍備競争の「ブラックホール」で生き残ることはできない。すべての国家が外交にコロナ・ワクチンを含ませなければならないということをコロナが物語っている。
ジョージ・ワシントン大学には韓国語に関心がある学生が多い。彼らに韓国と東北アジア情勢を紹介するたびに、目がきらきら光るような興味と情熱を感じることができる。
東北アジアの平和のための韓・米・日の協力は合理的な関係性の発展だ。自国の利益だけを追う国粋主義を越えて、より大きな範囲で共生しようという発露から始まる。自己を主張する時、相手が私のどんなところに関心を持ち、聞く耳を持つのかに集中してみるといい。
そこで互いに共生が可能なテーマが導き出される。私はこれを若者たちに強調している。
韓国国民がCOVID防疫に積極的に参加して自らウィルスを抑制するために努力する姿に最も感銘を受けた。たとえコロナが急増しても大衆がマスク使用とワクチン接種などの国家防疫指針を理解して協力する高い市民意識がうらやましい。
韓国の公共インフラに対する長期の投資も印象的だ。公共施設がきれいで現代的であるのは、その空間を皆にとって便利なようにつくることが政府の仕事だということを国民が理解しているからだ。これは他の国々にも大きな教訓となる。
原文の記事PDFはリンク先のページをご覧ください