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トンネル建設のための地質調査

日韓トンネルにおける地質調査の進展を追う前に、トンネル掘削のための地質調査とはどんなことをするのか、その全体像を説明する。一般的に、行うことは既存資料の収集である。国土地理院などに、国が行った調査のデータが保存されている。また大学が持っている資料などもある。集められた資料によって、トンネルを掘る地域の概略的な地質図(平面図と断面図)を作成する。その地質図に基づいて、地表踏査(写真参照)つまり該当地域を実際に足を運んで地表や堆積物などを調査することである。

 


※地表踏査の様子

地質の平面図を作れば自動的に断面図もできるが、それはあくまでも仮のものである。それをより精確なものにするために、「ボーリング調査」と「弾性波探査」を行う。それらによって得られたデータを、各地層ごとに表にする。それを、今まで日本でやってきた何千本というトンネルのデータのパターンに当てはめてみると、どんな地層構造になっているか、またその地層に適切な「トンネルの掘り方は何か」が出てくる。そのパターンを持っているのはJR、鉄建公団、道路公団、建設省、電力会社などで、それぞれ独自のデータに基づくパターンを保有している。トンネルは完全に「経験工学」であり、調査である値が出れば、それに当てはまる工法は経験則的に決まってくる。

 

トンネルのルートを決めるまでの地質調査を「概査」という。最初は広い範囲を覆うように物理的な手法で調査するので物理探査といわれ、よく使われるのは弾性波探査や電気探査などである。物理探査は面の調査で、ボーリングは点の調査である。弾性波探査とは、調べたい地層のある一点で火薬の爆発などによって振動波を作り、それが地沖の地層境界などにぶつかって跳ね返ってくるのを、もう一点の受信機でとらえ、その波の速度やパターンで地層の実態を探るものである。弾性波の震源としてはダイナマイトが多く使われる。弾性波は地層の硬さに比例して、地層が硬いほど波は速く伝わり、振幅は小さくなる。逆に地層が軟らかいと、振幅は大きくなり波は遅く伝わる。

 
振動波が反射されてくるのは、地層の硬さが異なる面からである。同じ地層の中でも生成過程によって地層の硬さは異なってくる。異なった地層でも硬さが同じであれば、その境界面からの反射はない。断層があれば、当然そこからも反射されてくる。地層の中の水の動きなどを調べるのが「水文調査」である。物理探査としては電気探査という手法を使う。地表の一点をプラス極にし、もう一方をマイナス極にしておき、地中に電気を流すと、地中の水によって電流の波形が変わってくる。それによってどこに水が溜っているか、地下水脈があるかが分かる。山にトンネルを掘る場合、よく地中に溜り水があって、出水事故につながることがある。そのため、山全体に電気探査をかけて水の有無を調べる。山全体に針ねずみのように電極を立てることになる。それによって溜り水のありそうな箇所が分かると、今度はボーリングによってそれを確認する。

 


※陸上でのボーリング調査

ボーリング調査(写真参照)する箇所は、地層の断面図を作成するのに必要と考えられるところから選ぶ。地表に出ている地層が、どういう角度で地中に入っているか分からないところ、また地表に出ていない断層がある場合がある。断層というのは、地震などの地殻変動で地層が切れているところをいう。どこに断層があるかは、地表踏査だけでは分からない。トンネル工事で一番トラブルになるのは水と断層である。それがどこにあるかを調べるためにボーリングを行う。

海洋での調査は、地上のように歩いては調査できない。そこで、最初に音波探査をする。調査船の後ろに震源を垂らし、さらにその後方に振動波の受信機を浮かべておく。海中での爆発による振動波は、海底や海底下の地層に反射して返ってくる。それによって陸上と同じように、地下構造を調べることができるのである。音源は電気的な信号とか、圧力ガスを噴出させる手法(ウオーターガン)などが代表的である。それぞれの境界で跳ね返った信号が記録され、それを過去のパターンに当てはめると、およその構造が分かる。
 
それに並行して行われるのが、ドレッジングである。これは、直径約50cm、長さ約3mの鉄製の筒を海底に降ろし、それを船で引き摺って、表面の岩石のサンプルを採集する。音波探査と同じ海域に対してこれを行う。対馬海峡では全部で約500ヵ所で実施した。さらに、どうしてもおかしい箇所や断層がある箇所では海洋ボーリングをする。ボーリング調査(オールコア・ボーリング)とは、中空のパイプで地中を掘り、その箇所の地層のサンプルをそのまま取り出すことである。このサンプルのことを「コア」と呼んでいる。油井や温泉の掘削だと、目的の油層や温泉に突き当たればいいのだが、地質調査の場合は、その過程のコアの採取が目的なので、注意して掘り下げていかなければならない。
 
回転するパイプの先には、工業用ダイヤモンドを張り付けた刃が付いている。それで500m掘ると最大500mのコアを採ることができる。普通、コアは3m掘進することに引き上げられる。コアは平均直径が7.5cm、最初は太いパイプを使い、先に行くほど細いパイプになるので、コアも次第に細くなる。


※海上ボーリング
 


※船上に積まれたボーリングのコア

海洋の場合はボーリング専用の調査船(写真参照)を使うことになる。当時、日本には東海サルベージが一隻所有していたが、対馬海峡での日韓トンネルの調査の後、廃船になってしまった。海上では調査船から4本のワイヤを伸ばし、アンカーリングという巨大な重りを海底に埋め、前後左右の船の動きをなくする。対馬沖の韓国側の海域でボーリングをした時には、海流が余りにも速過ぎたので、ワイヤが一本切れてしまった。一番大変なのは上下の揺れに対する対応である。
 

そのため、船上に備えつけられたボーリングの機械そのものが、上下動に耐えられるように作られている。強力なバネが付いていて、上下動を吸収するのである。対馬沖では水深が150mのところで、海底下500mまでを40日かけて掘った。この日数は陸上と同じくらいである。
 
データが揃って地質図などができると、それに基づいてトンネルのルートの選定を行う。技術的には地形、地質と施工法が問題になる。断層や出水があると、工事が難しくなり、それだけ工事費もかさむので、できるだけ安定した地層を掘り進むようにルートを選定するのである。もっとも現実には、それに加えて行政的な条件も考慮の対象になる。

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